先月、北京を訪れたときのことです。
街を歩いていて、どこか見覚えのある漢字が目に飛び込んできました。
「煎餅果子」
思わず立ち止まりました。
「おっ、煎餅屋さんだ!」と、思わず反応してしまったんです。

けれど、近づいて見てみると——
そこにあったのは、日本でいう“せんべい”ではなく、
クレープのような屋台グルメでした。
中国では「煎餅(jiānbǐng)」といえば、
小麦粉や雑穀粉でつくった生地を薄く焼き、
卵・ネギ・パクチー・甘味噌・ラー油などを塗って、
揚げパン(油条)を巻いて食べる朝ごはんの定番だそうです。
日本の“カリッと香ばしい煎餅”とは、まったく別物。
でも、それもまた“煎餅”。
それを知って、なんだか嬉しくなりました。
同じ漢字でも、国が違えばまったく違う料理。
けれどどちらも「日常に根ざした、庶民の味」。
文化のちがいって、ほんとうにおもしろいですね。
芸陽堂の「煎餅」は、
広島・吉島で一枚一枚、手で焼き上げる小麦粉せんべい。
形も音も、香りも、パリッとした昔ながらのお菓子です。
もし海外のお客さまに「Jianbing?」と尋ねられたら、
「それは中国のクレープですね。うちの“煎餅”は、日本で昔から親しまれてきた
“パリパリのお菓子”なんですよ」と、
笑顔でお伝えしたいと思います。
文化を知ることで、自分たちの文化の輪郭がはっきりする。
そんなことを、北京の朝、思いました。